トキオブログ

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救えない兄弟たち「ミーン・ストリート」

  マーティン・スコセッシの「ミーン・ストリート」を借りてきて、何年振りかに観た。大好きな映画のひとつです。

ミーン・ストリート [DVD]

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  この映画にはワルは沢山出てくるけど、本気の悪い奴は出てこない。主役のチャーリーも人当たりは良い以外は何がある訳でもない青年で、でも人生で勝ち上がりたいと望んでいて、いつも悩ましいような、真面目くさっているような、そんな表情をしている。全編通してチャーリーのこの神妙な顔が好きだ。
  もう一人の主役がひたすら破滅的に生きるジョニーボーイ。映画は「教会で罪を贖うことは出来ない。街や家庭で贖うのだ。」というチャーリーの独り言で始まるけど、チャーリーは面倒ばかり起こすジョニーボーイの存在を自分の贖罪だと思って助け続けている。ジョニーボーイは全くもって上手い生き方を知らないし、知ろうともしない。そこに苛立つチャーリー。この映画はこの二人の押し問答がひたすら続く。
  ジョニーボーイは悪人ではないが、返すはずの金を使った上(しかもそれは返済のためにチャーリーから借りた金)、開き直ったあげく借りた相手を挑発するようなことをやらかす。またベトナム戦争から戻ってきた青年のお帰りパーティーで、その戦争帰りの青年が突然キレ出すシーンがある。誰にも分からないトラウマを抱えて戻ってきたらしいこの青年やジョニーボーイの突拍子も無い行動は、上手く生きているはずの人間たちをバツが悪い気持ちにさせる。この辺りの「救いようがない人々」に対する微妙な空気感が、ベトナム戦争という時代を反映していると言われるのかなーと今回見て思ったりした。
  まあこの映画は、二人でゴミ箱の蓋を持ちながらじゃれあったり、チャーリーに怒られて泣くジョニーボーイだったり、そういう二人の友情の描かれ方が何だかんだ好きなんだけど。