トキオブログ

思うことをうまく文章にしたいです

平山夢明の小説を読んでいる

ダイナー (ポプラ文庫)

ダイナー (ポプラ文庫)


  一日で一気に読み終わってしまった。打海文三の「ハルビン・カフェ」を読んでいた時に近い興奮度だった。文字を追うのがやめられない、ビリビリする興奮。
  出てくる殺し屋の中で、特にキッドが良かったし、ラスト付近を読んで著者もけっこうキッドが好きなんじゃないかと思ったりした。キッドは娼婦の母親から産まれ、幼少期から小児性愛者たちに身体を売り、全身整形で子供の姿を維持し、子供を専門にする殺し屋だ。イカれた人間の一見カオスな世界の中にも、ある秩序が存在する。それをダイナーという場所の次に、一番体現していたというか、語っていたのがキッドだった。そして秩序を必要とするという点では、彼らもまた人間だなぁと思ったりした。普通の人間からは、あまりにかけ離れてしまったけれど。

  でも嫌ったり憎んだりしていたわけじゃない。説明しづらい感覚なんだけれど、そのほうが落ち着くんだ。壁にかかっている額が曲がっていると気になるだろう。あれをもっと強烈にした感じ。だから俺は自分が気にいるように人形を変えたんだが困ったことが起きた。外に出るようになると、そこら辺を歩いている人間にも同じように感じるんだ。特に自分と同じ年頃かもっとちっちゃな子どもを見ると胸がムカムカした。
  ここで生きろ、この国で、この親で、男として、生きろって押しつけられたんだ。だったら好き勝手にさせてもらわなければ、神の奴隷のままで終わっちまう。それじゃ虫と同じだよ。