トキオブログ

思うことをうまく文章にしたいです

家について考えたこと

  ある家に行ってきた。分厚いブロック塀に四方を囲まれていて、重そうな瓦が上にのっている平屋だった。築年数は不明らしい。とにかく古い家だった。木戸を開けて敷地に入り、建物に入る。家の中心には和室と洋室がつながったリビングがあり、大きな硝子戸を通して広い庭に面している。畳の上に籐の椅子が置いてある。棚や床に山程積んであるのは、元家主が研究していた専門分野の本だった。部屋の壁には切り抜いた昔の写真が、トイレには大きな絵が、廊下にはたくさんの絵馬が飾ってある。洗面台には丸い手鏡が、キッチンのコンロの上には黄色いヤカンが、さっきまで誰かがいたようにそっとそのまま置かれている。そんな感じで家の中にはたくさんのモノが溢れている。でもそこには長い年月をかけて自分が好むものだけを積み重ねた、きっぱりとした感じがあり、気持ちよかった。そして人がいなくなってから長いはずなのに、清潔感があり、気持ちが安らいでいくのも不思議だった。
  この家に行って、最近は家そのものについて考えることがあまりなかったなと反省した。坪単価、資産性、利便性、間取りの機能性、設備の良さ、そういうパロメーターで測れるような、得か損のどっちかだけだというような、面白みのないところに目がいきがちだった。でも本来、家を買い住むっていうのはそこじゃなくて、その家と土地から自分がどういう影響をうけるのか、というところが一番重要だと思う。例えば芸術家のアトリエとかはそういう場所なんだろうけど、それは一般の家にも当てはめられることじゃないかと思う。あの古い家は、現代的な快適さからは遠いけれど、そのしがらみを飛び越えたことによって生まれている自由さがあって、とにかく素敵な家だった。そんなことを考えたりした。